西原准教授らが下部マントルの流動方向を実験的に制約

固体岩石からなる地球マントルは地質学的な長い時間をかけて流動変形することで地球内部の物質循環や熱輸送を担っており、その流動変形の状態を理解することは重要です。地表から沈み込み、深さ660km以深の下部マントルに達したプレートの周辺では、地震波の横波の異方性が観測されており、下部マントルの主要鉱物であるブリッジマナイトがせん断変形し粒子が特定の方位にそろった状態(結晶選択配向)にあると考えられます。
しかし、下部マントルに相当する高温・高圧力での変形実験とその結晶選択配向の測定は困難であり、これまでブリッジマナイトの結晶選択配向は明らかとなっていません。そのため、プレート周辺の下部マントルの流動変形の方向を知ることができませんでした。
本研究は、岡山大学惑星物質研究所の辻野典秀JSPS特別研究員と山崎大輔准教授、愛媛大GRCの西原遊准教授、神戸大学の瀬戸雄介講師、高輝度光科学研究センターの肥後祐司研究員、東京工業大学の高橋栄一教授からなる共同研究チームによるもので、下部マントルの温度圧力条件下でせん断変形したブリッジマナイトの結晶選択配向の決定に成功しました。
高温高圧での変形実験の技術改良による下部マントル条件下での大歪せん断変形実験を実現し、せん断変形したブリッジマナイトの結晶選択配向をSPring-8において測定しました。その結果をもとに、これまでに報告されている地震波異方性から、沈み込んでいるプレート周辺の下部マントルがプレートの沈み込み方向に流動変形していることを明らかにしました。
本研究成果は、イギリスの総合科学誌Natureの10月17日号において発表されました。

南太平洋のトンガ・ケルマディック地域の地球マントルの断面。沈み込むプレート(青)が下部マントルで横方向に流れている。左下はブリッジマナイトの結晶構造。(転載許可番号 3971590226692, Nature Publishing Group)

南太平洋のトンガ・ケルマディック地域の地球マントルの断面。沈み込むプレート(青)が下部マントルで横方向に流れている。左下はブリッジマナイトの結晶構造。(転載許可番号 3971590226692, Nature Publishing Group)

【発表論文】
Noriyoshi Tsujino, Yu Nishihara, Daisuke Yamazaki, Yusuke Seto, Yuji Higo, Eiichi Takahashi, Mantle dynamics inferred from the crystallographic-preferred-orientation of bridgmanite, Nature, DOI: 10.1038/nature19777

【参考HP】
論文HP http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature19777.html
プレスリリース資料 https://www.ehime-u.ac.jp/data_relese/data_relese-32431/
Nature http://www.nature.com/nature/index.html
岡山大学惑星物質研究所 http://www.misasa.okayama-u.ac.jp/jp/
神戸大学理学研究科惑星学専攻 http://www.planet.sci.kobe-u.ac.jp/index.html
高輝度光科学研究センター(SPring-8)http://www.spring8.or.jp/ja/
東京工業大学理学院地球惑星科学系 http://educ.titech.ac.jp/eps/

 

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