評価委員 D
               
1. 目的・目標
 設立の目的・目標に合致した成果が挙げられていること、またそれに向けた将来計画も述べられているので、申し分ないと思う。先のことはあまり憂うことなく研究に邁進されることを期待したい。

2. 組織
 教授3、助教授2、助手3は最適な構成ではないだろうか。センター長の卓抜な研究能力と指導力で、GRCを国際的な研究組織に育てたと思う。評価が益々高まり、教員ポストが増えるとしても、これには慎重に対処すべきではないかと老婆心ながら感じた。技術系職員のサポートがないのは困難なことが多いのではないか。それぞれの分野に習熟した技術職員なくして実験科学は成り立たないことを訴える必要もある。いずれにしても、高圧分野での実験機器の多さに驚いたが、その維持管理を研究者が行っているとのことだが、かなりの負担になるのではないだろうか。

3. 研究活動
 研究成果を着実に論文として発表していることは高く評価できる。論文引用度数が日本の大学でトップとの結果も誇るべきことと思う。外国からの短期および長期訪問者も多く、国際的なセンターとしての機能を持っている。センター内でのセミナー開催、国際学会での報告なども十分行われている。センター長が、各研究員と面談して、研究の助言等をしているとのことだが、日本の大学ではほとんど行われていないことであり、センター長の研究実績からくる重みと、小さな組織であることが生かされているものと思う。

4. 教育活動
 学部および大学院学生が多いのも特徴である。外部評価会では、3回生が与えられたテーマに関連した論文を読み、それをポスターにまとめて発表していたが、よく理解できたものと感心した。学生にやる気を起こさせた教員の熱意を評価したい。このほか、卒論、修論などの成果のポスター発表があったが、それぞれ内容のあるものが多かった。これだけ多数の学生を少人数の教員が指導するのは、大変な努力が必要であろうと感じた。

5. 社会貢献と連携
 一般向けの解説書の出版や講演会なども行われているようである。また、センターの研究業績が様々な形で外部でも活用されている。さらに、これらの活動状況をGRC News Letter にも掲載されている。ホームページも充実しているので、情報発信も十分になされている。

6. 施設・設備
 職員の研究室、実験室、学生の居室に関して、これ以上の環境が望める研究機関は日本には少ないだろう。少なくとも私の大学では望めない。研究室の階が異なる研究者や学生の間で交流が途絶えないような工夫もなされるとのことなので、これも今後を期待したい。愛媛大学当局が力を入れていることも、センターの占有面積を見てもよく分かる。これだけの成果を挙げているのだから当然と思うが、今後とも支援をされることを期待したい。

7. 管理運営および点検改善
 特に記すことはない。

8. 総評および提言
 外部評価を受けて改善するとの目的より、GRCが設立の目的に沿って発展させてきたかを確認する会であったと感じられた。外部評価会の開催、GRC News Letter の発行、各種のセミナー開催など、"やり過ぎ"とある評価委員がコメントしていたが、私もそう思った。ただし、やり過ぎてまずいことはないので、職員の研究活動を阻害しなければ大いに進めて欲しいと思う。
 外部評価会でのポスターセッションの時間がやや短かったので、次回同じような形式で実施するならば、学生や若い研究者とのコミュニケーションの時間をもっと取ってはいかがかと思った。
 GRC3つの"I"の内、InternationalとInnovative は間違いなく達成されていると思われるが、Interdisciplinary に関しては、今後の課題と感じた。GRC内部での共同研究は、徐々に進んでいるようだ。第1原理に基づくシミュレーションに関して、 私にはコメントする能力はないが、有望な研究手法に思えた。また、高圧実験との比較検討も行われており、 分野間の共同研究が進められている例と判断した。
 地震分野と高圧分野の連携協力は重要ではないかと感じた。Vp/Vs比等から、"水"との結論を導き出すところは地震学界の常識でも、GRCでなければできない研究成果も期待したい。ただし、無理な共同研究は、研究の進展のブレーキになる可能性もあり、自然に行われるべきであろう。地震学の分野で、これだけ大多数の学部生と院生を指導しているのは、日本の大学では他にないだろう。研究成果も挙げつつ、 学生の指導教育も行っていることを評価したい。ただし、トモグラフィーが主な手法として研究が行われているが、さらに視野を拡げた今後の計画も知りたかった。
 昨今、大きな機関や大学に人や予算が集中し、研究の中心となることが当然となって来たが、愛媛大学に置かれたGRCはこの動きに 一矢報いるものと感ずる。地方大学にこのような国際的な研究センターが存在することが、日本の科学レベルの高さを表すものではないだろうか。このような優れた成果を挙げ、世界に研究成果を発信していることは、日本において科学を志す若者にも、多くの研究者へも励みとなるものであろう。 私の大学に戻り、GRCの報告をしたところ、若い研究者の1人が、「とても元気の出る話だ」と感想をもらした。
 ただし、正直なところ、GRCについては知る人ぞ知るとの感じである。GRCは、もちろん分野を特化した小規模なセンターであり、日本全体に遍く知らせることはできないが、もっと活躍の様子は知られても良いのではないか。一つの方法として、GRC客員研究員は必ずしも実験装置の利用者だけでなく、分野と所属機関を広げ、これらの研究員を通して、研究活動について広めて貰うことも必要かと思った(ただし、雑用を増やさない程度に)。




      
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