最新のマントルトモグラフィーモデル"EHIME-2004"と3次元可視化
昨年の11月にアメリカ・ピッツバーグで行われたスーパーコンピューティングの国際会議において,
GRCと総合情報メディアセンター(CITE)が共同でブースを出展しました.これは,GRCの地震学部門が
昨年発表したマントルトモグラフィーモデルである"EHIME(Evolving
High-resolution Image of the Mantle of the Earth)-2004"と,GRCとCITEの村田助教授を中心
としたグループとの共同研究によるトモグラフィーの3次元可視化について紹介したものです.
"EHIME-2004"は,趙教授がZhao(2001)で発表したマントル3次元P波グローバルトモグラフィーモデルに,
世界各地の臨時地震観測網の地震波走時データを新たに加えてアップデートしたモデルで,Zhao(2004)としてPEPI誌に
発表しています.マントル不均質をより現実的に表現したグリッド法を用いた解析手法に加え,マントルを通る種々の
直達波・反射波・回折波を用い,最上部から最下部にわたるマントルの全範囲の不均質構造を高解像度でイメージして
います.それにより,マントル上昇流であるホットプルームの形状や地表のホットスポットとの関連がより詳細に分か
るようになりました(図1).
図1:"EHIME-2004"モデルによる,太平洋
中部を南北に切 った断面図.ハワイとタヒ
チのホットスポットに向かう,マントル最下
部から地表につながるホットプルームが明
瞭に確認できる.
"EHIME-2004"モデルの3次元可視化は,CITEのAVS-expressというソフトで行っています(図2,3).CITEの村田助教授を中心としたグループは,地球電磁気圏と太陽風の相互関係を調べるためにこのソフトを用いた電磁場の可視化に取り組んできています.今回,地球内部のトモグラフィーが3次元可視化に非常に適した素材であることを踏まえて,CITEの村田助教授との共同研究が実現しました.電磁場も地球内部の不均質も3次元構造を持つものであり,2次元の断面図にダウンサンプルするのではなく,3次元をそのまま表現することにより,より直感的な構造をイメージすることが可能です.特殊なプロジェクターと眼鏡を使用することによって,立体的に地球内部の不連続を見ることも出来ます.それにより,地球内部の高速度・低速度の分布の形状やサイズをよりリアルに観察することが出来るようになりました.(文責:
山田 朗,趙 大鵬,大田 悠平)
図2.地下15kmでの不均質と北極を中心とした地域の断面図を一緒に
表現.水平方向と鉛直方向の両方の不均質を同時に観察できる.
図3.アフリカ下におけるマントル最下部から地表まで続く大規模な
上昇流.AVSを用いて表現することで,上昇流の形状をより直感的かつ
容易に理解できるようになった.