9月8日夜、私たちは予定より一日遅れで北京に到着した。前日に日本列島を襲った大型台風で、その日の北京行きの便が欠航になってしまったためだった。その日は閑散とした関西空港内に閉じ込められていて、私たち学生参加者は日程調整にあたられている先生方の傍らを落ち着かない表情でうろうろしていた。私たちはこの先どうなるのかが気になって気になって仕方なく、ある人は先生方からこぼれ出た情報を流し、参加は取りやめかもしれないといい、ある人は外の様子を見に出かけてはまだ風が強いからやっぱりダメだといい、集まって憶測しあってはまた散らばるといった行動を繰り返していた。結局のところ全員が参加できることになったが、調整に携わった双方の研究所の先生方や事務の方々は非常に苦心されたことだろうと思う。  
 ワークショップが開催された北京大学は市内から20kmほど離れたところにあり、中国の伝統的な庭園と近代的な研究所が調和した美しい大学である。学生生活は非常に活気に満ちており、午前6時にはテニスをする人、ジョギングする人、読書する学生で溢れかえり、午後11,12時になるまで学生の賑やかな笑い声が聞こえてきていた。それもそのはず、この広大な敷地にはレストランやコンビニのほか、学生寮や浴場、デートスポットまでそろっているのだ。彼らはこのキャンパスの中で共同生活を行い、ともに切磋琢磨しあうのだろう。彼らの活発な日常生活を垣間見たことは私のこれまでの生活を顧みる上で大きな助けになり、また刺激になった。  
 ワークショップそのものは、台風の影響で当初の4日間の予定から3日間に短縮された。しかし、その中でも高温高圧実験や地震波を用いた地球内部構造研究、過去の地殻巨大地震の研究、レオロジーなど、多彩な研究テーマについて有意義で積極的な議論が交わされた。朝と昼に一度づつ設けられた休憩時間を使って質問に出かける学生も多く見られた。私の研究発表についてもたくさんのご意見をいただき、今後の研究にとって大きな励みになった。
 ただ、台風で一日ずれ込んでしまったせいで北京大生の発表がいくつかキャンセルになってしまったとのこと。あちらの学生はどのような研究を行っているのかすごく興味があったためにとても残念だった。また何かの手段でお互いの研究成果を交換し合うことができればと思う。ただ、やはりあちらの学生はとても勉強熱心である。ワークショップの最中もしきりにメモをとっている学生が目立ち、そうした態度が会議室の雰囲気全体を引き締めているような感覚を抱いた。このような姿勢は私たちもぜひ見習わなければならないと感じる。また、もうひとつ、私が気に入った北京大学の(というより中国の)文化を紹介したい。それは『教師節』。9月10日、自分の先生に感謝の意をこめて花束をプレゼントするという日である。キャンパス一面、花束を抱えて歩く学生たちを見て、こういう文化があることをうらやましく感じた。この薫風がぜひ日本中の大学にも広まればと思う。もちろん私たちGRCの学生がその先鞭をつけることになれば喜ばしい。  
 そんなこんなであっという間に過ぎていった3日間。北京大学で学んだたくさんのこと・・・積極的な勉強態度や討論、教師節などなど、これからのGRCにぜひ根付かせていきたいと思う。そして次回、ワークショップが行われたときにはもっと議論に参加できればと思う。最後に、このワークショップを企画し私たちを連れていっていただいたGRCの先生方、ご支援いただいた愛媛大学、そして私たちを温かく迎えてくださったITAGの先生方、また学生の方々に感謝いたします。 (出原光暉:理工学研究科M2)



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