第5回GRC地球深部科学国際レクチャー&10th GRC International Frontier Seminar
開催報告
〜金森 博雄 博士 (カリフォルニア工科大学地震学研究所教授)を迎えて〜
世界的な地震学者である金森教授による講義とセミナーを,11月4日と5日の2日間に渡って行いました.@ 地震という現象の基礎から始まり,地震の多様性・破壊過程モデル・地震のエネルギー収支といった,地震それ自身の物理と定量化,A 地震の早期警戒システム,B 大気圏(地球,木星)の地震波(音波)伝播,といった幅広い項目に関して講義を頂きました.2日間の開催には,名古屋大・岡山大・広島大からの参加者を含め学内外から教員・研究員・学生など60名ほどが集まり,熱心な聴講と活発な討論を行いました.
私見ながら感想を述べさせて頂きますが,大きく分けて2つの点が印象に残りました.1つ目は学問的な観点におけるもので,金森先生が用いていた「検証」・「定量化」というキーワードです.金森先生は"verify"という単語をしばしば口にされていました.これは,どんなに精緻な物理モデルを構築してもそれを検証(実際の観測で確かめる)出来ないと意味が無い,ということと理解しました.「検証」するためには,実際の観測量と比較するための適切な「定量化」が必要です.モデルの構築・定量化・観測との比較,という,科学を行う上では当たり前といえば当たり前の手順の重要さを改めて実感しました.2つ目は,金森先生の人格に関する点で,質問を受けたときの受け答えの仕方です.どんな質問に対しても,一言目は「なるほど」,という,必ず質問者を肯定する姿勢を取っておられました.人と人の関係をスムーズにする上で,実にすばらしい姿勢であると感じました.金森先生の人柄に関して述べるのは大
変恐縮ですが,このような姿勢に接し,尊敬の念を 新たにしました.
11月6日には,地震学研究室において,院生・PDの研究発表を6時間以上に渡って聞いていただきました.先生の専門とは多少離れた発表が多かったにも関わらず,間髪入れずに頂いた多くコメントが実に適切で,院生・PDの今後の研究に大いにプラスになったことは間違いありません.
先生の滞在期間はわずかでしたが,講義・セミナーを受け,また,一緒に食事や会話を交わした学生・院生,そしてもちろん教員にも大きな財産を残して下さいました.(文責・山田朗)
マントル遷移層領域でのX線回折・超音波同時測定に成功
GRCの肥後学術創成特別研究員と井上教員らは、SPring-8において18GPa、1400度Cというマントル遷移層に対応する高温高圧下でのリングウッダイトの弾性波速度測定に成功しました。このような高い圧力温度下でX線回折・超音波同時測定は例がなく、データ解析の結果が待たれます。
焼結ダイヤを用いた高温下50GPaの発生に成功
GRCの山崎教員らは、新しいデザインの高圧セルを導入した放射光X線実験において、1000度Cの高温下で50GPaを越える圧力の安定発生に初めて成功しました。GRCでは常温で60GPa領域の圧力発生を達成していましたが、マルチアンビル装置でこのような高温下で50GPaを越える圧力発生は極めて困難です。現在この技術を用いた下部マントル物質の相転移実験をSPring-8ですすめています。
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