13th GRC International Frontier Seminar 開催報告
  去る2005年9月12日にオーストラリア国立大学のIan Jackson教授、台湾国立成功大学の
Jennifer Kung 博士を招いてGRC国際セミナーをおこないました。参加者はおよそ50名で、
特にマントル条件下での弾性的性質の実験室における測定と、その応用に的を絞り、最新
の成果発表とともに活発な討論がおこなわれました。

  "The laboratory study of seismic wave dispersion and attenuation in
   upper-mantle materials: progress and prospects"
  講師:Ian Jackson(オーストラリア国立大学教授)
 "Laboratory measurements on elasticity on Earth materials at high
  pressure and temperature"
  講師:Jennifer Kung(台湾国立成功大学地球科学研究所)
  日時:2005年9月12日(月) 16:00-18:30
  場所:理学部講義棟2F201室

          



FIBによるLHDAC試料加工の世界初論文

  本研究費で導入した微細加工装置、収束イオンビーム装置(FIB)による研究成果
が、エルゼビアの雑誌Earth Planet. Sci. Lett. 誌に掲載されました。ナノ加工に用いら
れているこの装置を、レーザー加 熱ダイヤモンドアンビル装置(LHDAC)により得られ
た高温高圧合成試料に適用して初めて得られた成果であり、GRCの入舩や一色(西
堀)麻衣子(当時SPring-8、現産総研)らによりおこなわれました(写真)。この手法と
透過型電子顕微鏡を組み合わせた分析は、超高圧実験試料の組織観察や化学組成
分析において今後普及していくものと予想されます。

    
    写真:FIBによるLHDAC試料の加工プロセス(Irifune et al., EPSL239,
        98-105, 2005)



新しい超硬材料を用いたX線その場観察

 SPring-8におけるX線その場観察実験と超音波測定実験を組み合わせ、マントル遷
移層の主要高圧相であると考えられているメージャライトの弾性波速度測定が、GRC
の肥後研究員・井上徹助教授らにより18GPa, 1400℃の条件までおこなわれました。
同様の方法により、もう一つの主要高圧相とみなされているリングウッダイトの測定に
既に成功しており、これらの結果を組み合わせることにより、マントル遷移層の物質構
成や化学組成に重要な制約が与えることが可能です。一連の実験の予備的結果とそ
の意義については、12月にサンフランシスコでおこなわれたアメリカ地球物理学連合
(AGU)総会において、肥後らおよび入舩らによりそれぞれ発表されました。



学術創成研究中間ヒアリング結果

 7月20日に学術振興会においておこなわれた、本研究課題の中間ヒアリングの結果
の通知と、学振HP上での公表(http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/index.html)が11月
にありました。本研究課題は総合評価で高い評価をいただきましたが、特にコメントとし
てGRCで開発されたナノダイヤモンドを用いた、今後の圧力発生への応用について強
い期待をいただきました。現在このダイヤモンドの大型化・実用化に向けた共同研究を
おこないつつあり、今後この課題についても重点的に研究をすすめる予定です。



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