入舩 徹男
GRCの設立後今年は7年目を迎えますが、この間研究活動は量・質ともに順調に発展しており、その結果例えば昨年1年間で40編程度の論文が国際誌に掲載されました。これはGRC設立当初の3倍に相当します。教員数は少ないながら、教育その他様々な活動に携わりつつ高い研究水準を維持・発展させているスタッフの努力に敬意を表するとともに、GRC事務系職員をはじめとした関係各位の多大なご支援に感謝いたします。
教育面においてもGRC教員は大学院・学部教育への寄与はもとより、本学のスーパーサイエンス特別コース(SSC)学生の教育において重要な役割を果たしています。昨年初めておこなわれたGRC外部評価においても、このような研究・教育両面の活動において高い評価が得られました。
GRC創設を契機に得られた独自の研究成果の一つとして、超高硬度ナノダイヤモンド(Nano-Polycrystalline
Diamond: NPD)の開発(2003年Nature誌発表)と、その大型化・高品質化があげられます。特に昨年1年間におけるその発展は非常に大きく、体積で2003年当時の約50倍という大型化、またクラックや不純物のほとんどない高品質化を達成することができ、超高圧発生技術への応用や工業的応用に関しても重要な進展が得られています。
NPDの発見は、私自身がおこなった約20年前の失敗実験に端を発しています。従来に報告のない圧力温度条件でのダイヤモンド合成を、ときどき思い出したように自ら実験を試み、また何人かの学生の卒論・修論としてその合成条件の解明を続けてきました。このダイヤモンドが特異なナノ組織を持ち、従来にない特性を持つことが明らかになったのは、数年前にダイヤモンド合成の専門家である研究者と出会ったのがきっかけです。本NPDの開発も、両者の緊密な共同研究なくしては得られなかったものです。
本NPDに関しては多くの論文として公表・執筆中であるとともに、これまでにフランス、ドイツ、イタリア、アメリカ、オーストラリアなど、様々な国での招待講演でその成果を発表しています。これを超高圧実験や変形実験に使いたいという申し入れもいくつかあり、今後いくつかの国際的共同研究へと発展することが期待されます。
GRCの目標として国際性(International)、革新性(Innovative)、学際性(Interdisciplinary)という3つの"I"言葉にもとづく研究を掲げていますが、本NPDの開発はまさにそのような目標に沿った成果の一つといえます。地球科学の枠にとらわれない学際的研究の結果として、従来にない特性をもった新素材の開発をおこない、これを新たな革新的実験技術の開発に応用する。またこの技術を用いて、地球科学の新たな発展を目指した国際的共同研究の展開を目指すという、3つのIの要素をすべて含んだ研究の例といえるでしょう。さらに、この結果として工業的応用の可能性も強まっており、想定外の4つ目のI(Industrial
application)までも実現できるかもしれません。
ちなみに科学的利用を目的にGRCで合成しているNPDを、我々は特にHIME-DIA(Highly
Incompressible and Mechanically Endurable Diamond)と称しています。"HIME"は愛媛の媛でもありますが、"媛"は男性を示す"彦"に対応する女性をさす古語であり、この合成に携わった何人かの女子学生に敬意を表してのネーミングです。HIME-DIAの本格的利用が、今年の初夢に終わらないことを祈りつつ…。
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