入舩 徹男
国際会議報告の項でも述べましたように、2月末にイタリアで開催された欧州の地球深部科学コンソーシアム"c2c"のキックオフミーティングに参加してきました。少し趣旨は異なりますが、米国にも同様なネットワーク"COMPRESS"が存在します。我が国の関連分野では、残念ながらこのような組織的なネットワークやコンソーシアムは存在しませんが、それぞれの研究機関の特徴を生かしたこのような研究・教育面での組織的交流は非常に重要であると感じています。
上記会議の翌週にはGRCで九大や広島大をはじめ、地球深部科学関連分野の研究者が集まり、第一回地球深部科学研究集会をおこないました。これは上記のc2cのようなネットワーク作りを意識したものであり、合同研究発表会等を通じて定常的な研究交流をもち、大学の枠をこえた研究・教育の新しい発展と活性化を目指したものです。当日は多くの学生や教員・若手研究員の参加により、地球深部の物性・構造・ダイナミクス研究分野における新しい研究・教育ネットワークの一つの方向性が確認されました。
一方、GRC超高圧グループにより世界で初めて合成されたナノ多結晶ダイヤモンド(NPD
= HIME-DIA)は、住友電工との共同研究を経て実用段階に至っており、超高圧発生技術への応用も開始されています。このような状況のもと、HIME-DIAの地球深部科学や高圧物性科学への応用を目指した研究会が、GRC、住友電工、東大物性研、東大理、名大理、阪大極限研、阪大理等の研究者の参加により4月末にGRCにおいて開催されました。この研究会も、研究機関の枠を越えたネットワークにより、一つの研究機関ではなし得ない科学技術のブレークスルーをめざそうとする取り組みであり、我が国独自の新しい技術として今後の進展が期待されます。
折しも"グローバルCOE"の募集がおこなわれていますが、前回の"21世紀COE"に採択された一部の拠点では、自らの拠点の強化をめざすあまり、教員の引き抜きや学生の囲い込みが目につきます。現代の先端的科学研究においては、互いの立場や特徴を尊重した、多様な組織との連携や交流が非常に大切だと感じます。GRCでは今後とも、学内外の様々な研究者との連携を強め、地球深部関連科学の研究・教育の新しい展開をはかりたいと思います。
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