入舩 徹男


  昨夏のドイツ長期滞在のツケか、今年は年末まで集中講義等バタバタし、正月もほとんど休み無しでした。1月に入り、卒論・修論・博士論文とまた血圧上昇期を迎えます。学生との真剣勝負を迎える時期であり、発表練習や論文の原稿をみて愕然とし、自らの不徳を痛感するのもこの頃です。縁あって愛媛にきて18年あまり、数えてみるとこの間50名近い卒論生、その約半分の数の修論生を指導したことになります。
  愛媛の地球科学分野で博士課程ができたのは10年あまり前と、比較的最近のことですが、この間9名の博士課程学生(博士号取得者現在までに5名)の、また15名の博士研究員(うち外国人3名)の指導をおこなっています。その多くが准教授・助教や常勤の研究員、また海外での博士研究員として各地で活躍しており、地方大学における人材育成の成果としては、それなりの水準ではないかと自負しています。
  あわただしい正月でしたが、この時期になると毎年これらの卒業生が帰省のついでに研究室に顔をだしてくれます。年末には初ボーナスということで、ご馳走してくれた子もいました。自分の学生だけで50人、超高圧グループを含めると100名近い卒業生がいると、なかなか名前が思い出せないこともありますが、それぞれが元気に活躍する様子を聞けるのは、教員冥利につきると感じる瞬間でもあります。
  GRCが生み出した世界最硬ナノ多結晶ダイヤモンド。我々は通称「ヒメダイヤ」と呼んでいますが、これが世にでる過程では10年を越える長い期間に、多くの学生が卒論や修論で一生懸命実験に取り組んでくれました。特に女子学生に元気がいい人が多く、ヒメダイヤの生成条件を見い出すのに多大な貢献をしてくれたのも、この名称の由来の1つです。愛媛の「媛」はプリンセスの姫ではなく、男性の「彦」に対する女性をあらわす古語ということです。
  最近は教育・研究以外のことに忙しく、なかなか学生と接する時間がとれません。しかし大学にある研究センターとしては、やはり自らの学生あっての存在であり、あくまでも研究を通じた教育、教育のための研究の観点を忘れてはいけないなと感じるこの頃です。とはいえ少子化時代を迎え、また法人化を経て大学格差は広がる一方です。地方にあって多くの学生の指導をしながら、世界水準の研究成果を出し続けるのは並み大抵の苦労ではありません。
  そんな中、地球科学分野にもまた「COE」騒動の季節がやってきました。今回は高見の見物を決め込んでいましたが、どうもそういうわけにもいかないようです。巷ではこれを見越した仁義なき人材引き抜きが、横行しているようにもみえます。我々はそのような動きとは一線を画し、学生とともに地道な努力を積み重ねることにより、また周囲とのつながりを重視して独自の道を行きたいものです。




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