2007年12月10日〜14日まで、一週間にわたって開催されたAmerican Geophysical Union(AGU)の秋季大会に参加してきました。今年AGU Fall Meetingは40周年らしく、世界中から1万5千人を超える参加登録があったそうです。GRCからは10名が参加し、各人が研究発表を行いました。AGU Fall Meetingはとにかくその規模の大きさが特徴で、世界中の地球惑星科学者が一堂に会し、色とりどりの、多種多様な研究発表が行われるという魅力があります。しかし参加2年目で初心者の僕には学会全体を見渡して楽しむ余裕はまだなく、自分自身が関係する分野の科学者と数多く知り合い、直に濃密な議論をできたことこそが、大きな収穫でした。
今回僕は"焼結ダイヤモンド-マルチアンビル装置"を用いた、ほぼ日本国内でのみ開発が行われている実験技術の紹介と、その実験技術を応用した下部マントル主要鉱物の状態方程式に関する研究結果を報告しました。マルチアンビル装置はもともと1970年代に日本国内で開発され、その技術が海外に輸出されて、現在高圧実験地球科学のスタンダードツールとなっている装置です。世界的には30万気圧が標準的な圧力限界であるマルチアンビル装置を用いて、60万気圧を超える超高圧下での精密な実験結果を報告することができたため、発表では期待した以上の好反応が得られ、研究意欲がさらに高まりました。また今後の研究の進め方についてもコメントをいただくなど有意義かつ刺激的な議論もでき、Wikipedia(英語版)で"relatively
rare research tool"と評されているマルチアンビル装置の存在感をアピールするのに、一役買えたのではと思っています。
AGUでは今現在ホットな研究テーマに特にスポットライトが当てられ、強く印象に残るよう感じられます。と同時に、去年はとてもホットだったのに今年はあまり見ないなあ、というテーマもありました。このようにファッションと同じような流行り廃りが学術研究の世界にもあるということを、AGUに参加するようになって初めて実感するようになりました。そしてファッションの世界における流行と対比すると、どのように研究を進めて行くのが格好良いか、もしくは自分に合うかをイメージしやすくなる気がします。流行を追うのももちろん良いのですが、伝統的な形式を現代流にアレンジして着こなす、温故知新なネオトラッド的アプローチがやっぱり自分には合うかな、なんて思いました。そこからじわじわと長期的な流行を生み出せるよう、今後も精進したいと思います。(丹下慶範)