フンボルト財団「シンポジウム」
(写真左:フンボルト財団理事長、写真右:入舩センター長)
フンボルト財団が主催するフンボルト賞受賞者による「シンポジウム」が、4月3日〜6日にバイエルン州の古都バンベルグでおこなわれ、私も参加する機会を得ました。4月2日に出かける予定だったのですが、科研費のヒアリングが当日にあることが直前にわかり、急遽日程を変更して3日に成田から飛び立ちました。3日の夜おこなわれたレセプションとディナーには間にあいませんでしたが、会議がおこなわれる18世紀の建物を利用した瀟洒なホテルには、なんとか1時前にはチェックインすることができました。
翌朝はバイロイトから来てくれたバイエルン地球科学研究所のDavid Rubie、Catherine
McCammon博士と朝食を共にし、午前中はこれまでの受賞者による2つのレクチャーに参加しました。1つ目はマテリアルサイエンス分野の受賞者による高速反応系の、また2つ目は生物科学関係の研究者によるストレス適応に関する話で、それぞれ1時間ずつの講演とその後30分程度の質疑応答がありました。時差ぼけと寝不足の上、素人むけに話してくれているとはいえ他分野の英語による講演は少々つらく、ときどき意識が飛んでしまいました。
午後からは受賞者や招待者計70名くらいを4つのグループに分け、15〜20人程度のグループによる討論会がおこなわれました。車座に座った参加者は、それぞれ数分程度の自己紹介と研究内容の紹介をおこない、続いて財団側から提示されたテーマについて2時間程度の自由討論をおこないました。ここでうたた寝するわけにもいかず頑張って目をあけておりましたが、テーマはドイツの教育システム、環境問題、エネルギー問題等多岐にわたり、ときどき日本の現状などの質問を振られ緊張の2時間でした。大半がアメリカ等英語圏の参加者で、私としては議論についていくのがやっとでしたが、参加者の多くが様々な問題に高い見識を持っており大きな刺激を受けました。
その日はディナーの後、会場をホテルから川向こうのモダンな会議場に移し、受賞者のためのコンサートと業績紹介、受賞証の授与がおこなわれました。以前に受賞された方から古いオペラハウスでの式の様子をうかがっていたので、コンサートもクラッシックとばかり思い込んでおりましたが、今回はバンベルグ大学の学生によるジャズコンサートで、会場のモダンさとも相俟ってかなりカジュアルな雰囲気の式でした。それでも受賞者46名の一人ひとりの業績が紹介され、財団のプレジデントから証書を手渡され記念撮影をする間はさすがに少し緊張しました。
3日目はまた朝から講演会。前日良く寝たのでこの日の講演はそれなりに楽しめました。1つ目はアカデミアシニカの研究者による、台湾におけるIT関係の戦略と現状に関する講演で、様々な動画も含めたプレゼンテーションのうまさもあり面白く聞けました。2件目のシカゴ大の経済学者によるサブプライム問題に関する講演も、話題が時宜を得ており興味深い内容ではありました。しかし文系の研究者にありがちな、ppt等のディスプレーを一切使わない言葉だけの講演で、理系の非英語圏の参加者にはかなりつらいものがありました。理系と文系の「文化」の違いは、世界的にも共通なのかと妙に納得してしまいましたが。
あっという間の3日間でしたが、文系から理系まで多様な分野の各国の一流の研究者と話しができ、通常の国際会議では得られない貴重な体験でした。また全く違う分野の研究者でありながら、会話を交わすうちに意外なところで接点があることがわかるなど、あらためて世界は狭いと実感できた会議でした。同世代の受賞者が最先端の研究をすすめている様子を知るにつれ、私ももっと頑張らねばという思いを強めてくれた点でも大変有意義なシンポジウムでした。(入舩徹男)
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