このたび本センターの助手として赴任いたしました。私は、地球深部のマントルで、どのような運動が、どれくらいの規模で起こっているのかを物質科学的に知りたいという思いで研究してきております。地球深部は高温高圧状態ですから、実験室でこの状態を再現して、マントル構成鉱物のレオロジー的性質を決定いたします。
 例えば、マントル流動の易動度を表すのに、粘性率というパラメータがありますが、これは、温度・圧力はもとよりマントルの構成物質の粒径や拡散速度に依存します。そこで、粒径や拡散速度に制約を与えるような実験を行いました。まず、出発試料にフォルステライトを用い、この分解相である珪酸塩ペロブスカイト(MgSiO3)とペリクレースの粒成長速度を調べました。その結果、粒成長速度は予想されていたよりも遅く、例えば、沈み込むスラブ内では長時間、細粒状態が保持されることが分かりました。これは、変形機構を知る上で重要な手掛かりとなります。また、珪酸塩ペロブスカイト(MgSiO3)中でのシリコンの拡散速度を決定しました。この結果から、珪酸塩ペロブスカイトの粘性率を推定することが可能となり、珪酸塩ペロブスカイトがマントルのレオロジーを代表する場合では、ペリクレースが代表する場合に比べて、粘性率にして3桁程度高い(かたい)ことが示されました。
 また、実験室で再現されたマントル条件下で差応力を発生させ、実験試料を変形させました。そして、回収試料の結晶格子選択配向を調べその情報をもとに、地震学的観測と比較し、地球深部での変形様式を推測するという研究も行ってきました。例えば、試料にペリクレースを用いた場合ですと、下部マントル最下部で観測される地震波速度の異方性は、流動変形によるペリクレースの選択配向によって説明できるということが分かりました。
 今後は、今までの研究を引き続き行うとともに、放射光を上手く利用して、その場観察的に高圧レオロジー研究ができないかを模索していきたいと思っております。
  山崎 大輔
   (助手)
 






 この度本センターに助手として赴任しました。地球の深部の構造を地震の波を解析することで推定する研究を行なっています。 地球の深部は、まだよくわからないことが多いというより、わかっていることがわずかという現状です。
 例えば、1)マントルを上部と下部に分ける遷移層。410kmと660kmの不連続面(面or層?)の形状や物性の変化量とマントル対流の関係はあるのか、2)固体マントルと液体核の接するCMB領域。2つの極端に異なる物質層の境界では、化学反応による物質交換があるのか、大きな温度勾配による部分熔融があるのか、3)地球の46億年の歴史の中で少しずつ大きくなってきた内核。高温高圧下での鉄の結晶が特定のある方向に向いているらしい?のは何故なのか、などなど私たちが直接行って見ることの出来ない地球深部の謎を解くために、遷移層やCMB直上からの反射波、内核を通ってくる屈折波などの走時や振幅などを解析して構造を探っています。
 最近行なったのは、南半球のリゾート地、フィジー諸島付近での深発地震の日本での記録を解析し、南西太平洋下のCMB近傍の構造を推定した事で、この記録では、CMBで反射するScS波の異常な遅れ、同じくCMBで反射するPcP波に先行する微弱な波が解析の結果、見つかりました。これは、この地域のCMB直上に、まず地震波速度の遅い層がありその上に速度の早い板状のフタがあるような構造を想像させます。上昇するマントルプリュームの種と地表から沈んできたスラブを見ている可能性があります。
 地震波から分かるのは、速度、密度、減衰などのパラメーターで、このセンターの他分野で行なっている実験の値と比較しながら地球深部の構造を求めていきたいと思っています。
 今後ともよろしくお願い致します。
   山田 朗
    (助手)