GRC設立後ちょうど2年が経ちました。この2年間はセンターの立ち上げ期と位置づけ、様々な新しい試みをおこなうとともに研究教育環境面の整備に取り組んでまいりました。この結果多くの最先端の機器の導入とともにスタッフの充実が計られ、また研究活動に加えてホームページ・ニュースレター・セミナー等を通じてGRCの名前も国内外に認知されるようになりました。この4月には新しい総合研究棟への引っ越しも終え、ようやく名実ともに研究センターとしての機能を発揮できる体制が整ったといえます。つきましては、先般発行しましたGRC活動報告第1号(2001, 2002年度)に、この2年間の活動状況を取りまとめましたのでご一読いただければ幸いです。
  さて、3年目に入った今年度からは、それぞれの部門における研究教育活動の一層の活発化とともに、部門間およびGRC内外との共同研究の活性化を目指したいと考えております。特に超高圧下での弾性波速度測定や、マントル中地震波速度分布の物質科学的検討の2点に焦点を絞ったGRC内部における部門間共同研究を推進するとともに、研究員(学内)と客員研究員(学外)との共同研究もこれまで以上にすすめたいと思います。後者についてはすでに多くの共同研究がおこなわれ研究成果もあがりつつありますが、この間新しくGRCに導入された機器や独自の技術を利用した研究推進のため、共同利用に関するガイドラインの検討を開始したいと考えております。
 このようなGRC内外の共同研究の推進に関連し、GRC超高圧分野を中心に地震学分野も取り込んだ地球深部物質の研究に対して、平成15年度より5年間の大型科学研究費「学術創成研究費」の採択が内定に至りました。この研究費により、特に放射光地球深部物質科学分野における共同研究に必要な機器の充実や消耗品の購入とともに、数名の研究補助員の採用等を通じて一層の研究支援体制を整えたいと思います。  
  またこの研究費による新しい取り組みとして、海外から一流の研究者を年間数名程度招き、それぞれ2日間程度の集中講義(仮称"GRC国際レクチャー")と討論を企画しております。すでにエール大学唐戸俊一郎教授、オーストラリア国立大学Ian Jackson教授、シカゴ大学のYanbin Wang上級研究員の同意を得ており、6、7、8月と連続した公開レクチャーを開催する方向で計画をすすめています。これに関しては周辺の各大学や研究機関の研究者や学生への参加を呼びかけ、我が国における地球深部科学分野の新たな展開に向けた一つの契機にしたいと考えております。またこの国際レクチャーはGRC教官が指導する学部学生や大学院生、若手研究員の世界一流水準を目指す気概を養うとともに、GRC教官自身の不断の自己点検・評価の機会としてもとらえたいと思います。

入舩 徹男