本年11月後半から、アメリカ・シカゴ大学に日本学術振興会の特別研究員の身分で、研究生活を始めました。私が所属しているのは、シカゴ大学のGeoSoilEnviroCARSという組織です。この組織に所属する研究者は、実際にはアメリカの第3世代放射光施設であるAdvanced Photon Sourceに常駐し、放射光を用いて地球科学の研究を行います。その中でも私が所属しているのは、LVPグループで、大型の高圧発生装置と放射光を組み合わせた研究を進めています。ボスは、Yanbin Wang博士で、今年の夏には約2ヶ月間、GRCに滞在しておられました。また、私の物性研究所時代の先輩の内田雄幸博士がビームラインサイエンティストとしていらっしゃいます。私を含めて3人だけの小さなグループです。
 このグループでは、とてもユニークな実験技術の開発をおこなっています。現在は、D-DIAという変形実験装置と単色の放射光を組み合わせ、任意の歪速度で変形中の試料の歪(試料の透過像から見積もる)と応力(X線回折図形から見積もる)を同時に決定し、マントル鉱物の精密な変形実験をその安定領域で行う実験技術の開発をメインに行っています。また、高温高圧下におけるX線トモグラフィー、さらに複数の波長の単色X線を、KAWAI型装置中の試料に照射し、試料の結晶構造解析をより精密に行う実験技術の開発などもおこなっています。また、CARSというグループはたく さんの放射光ユーザーを受け入れているため、アメリカ国内あるいはヨーロッパを中心とした諸外国からも頻繁に研究者が実験に訪れています。私は主としてこのD-DIAの実験技術を勉強し、マントル鉱物の流動特性を研究するために、このグループに参加させてもらっています。
 こちらに来て3週間程度たちますが、まだアメリカの生活に慣れるので精一杯の状態です。すべての社会のシステムが日本と異なるため、わからないことばかりで戸惑ってばかりですが、ひとつひとつ解決して、どうにか生活ができるようになりつつあります。また、松山の温暖な気候になれた体には、寒さがこたえます。先日、夜にずいぶん寒い日だなと思っていたら、その最低気温がマイナス20℃だったという日がありました。いまは、研究よりも社会勉強をしているような状態ですが、一日も早く研究のペースをつかみ、いい研究が楽しく行えるようになりたいと思っています。(西山宣正)
  

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 シカゴ大学GeoSoilEnviroCARS滞在記