D-DIA型超高圧変形装置(MADONNA)
        
  本装置は、立方体の試料空間を6方向から均等に加圧する能力と、その試料空間を均等に加圧したのち、高圧力下において上下方向からさらに力を加え、試料を高圧下で変形させる能力を有する新しいタイプの超高圧発生装置です。
 本装置はD-DIA型と呼ばれるガイドブロックを有しています。D-DIAとはDeformation-DIAを意味し、通常のDIA型ガイドブロックに改良を加えたものです。このガイドブロックを有する高圧発生装置は、アメリカに3台、ドイツに1台導入されていますが、本装置は、それらの5倍程度の高荷重(1500トン)を加えることができる、世界最大のD-DIA型装置です。
 DIA型ガイドブロックは、上下方向から立方体を加圧するアンビルが取り付けられた上下ガイドブロックと、水平方向から加圧するアンビル・サイドブロックから構成されており、この上下ガイドブロックとサイドブロックを組み合わせたものを大型の油圧ラム(メインラム)で加圧することにより、立方体の試料空間に高圧力を発生させます。しかしながら、D-DIA型のガイドブロックには、その上下ガイドブロック内の上下アンビルの背面にそれぞれ1つずつ小型の油圧ラム(Dラム)があります。そのDラムを用いて、メインラムによるガイドブロック全体の加圧(減圧)とは全く独立に、上下アンビルを駆動させることができます。したがって、メインラムを用いてD-DIAガイドブロックに荷重を加え、試料部を6方向から加圧し、その後に上下アンビルを独立に駆動させることにより、高圧力下における3軸変形試験を行うことができます。
 D-DIA型装置の登場は、それまで1〜3万気圧であった高圧下における変形実験の上限圧力を、10万気圧程度にまで拡大しました。これは地球の深さにすると約300km(上部マントル中深部)に相当します。本装置はD-DIA型装置を大型化することにより、その上限圧力を20万気圧まで拡大することを目指しています。この圧力は、深さ600キロ、マントル遷移層下部、に相当します。上部マントルを沈み込んできた海洋プレート(スラブ)は、マントル遷移層(深さ410〜660km)に到達すると、大きく変形し、マントル遷移層中に滞留します。しかし、マントル遷移層中でスラブがどのような変形を受け滞留しているのか?そのメカニズムは明らかではありません。本装置を用いて、マントル遷移層、および、スラブを構成する岩石の変形実験を行うことにより、スラブのこのような挙動を物質科学的に解釈することができると考えています。(西山宣正)


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