DAC用レーザー加熱システム
        

              図1

               図2
  本装置は、小型の高圧発生装置であるダイヤモンドアンビルセル(以下、DAC)用のレーザー加熱システムで、レーザー本体(ファイバーレーザー、図1)と加熱光学系(集光レンズ群、図2)、およ び測温システム(分光器)より構成されます。レーザー加熱法は、DACを使った高圧実験において試料部に高温を発生させる最も代表的な方法で、光学的に透明なダイヤモンド(アンビル)を通して試料部にレーザーを集光し、試料を直接加熱します。試料が透明でレーザー光を吸収しにくい場合には、吸収剤として金や白金の粉末を少量混ぜたりします。
 今回、当センターに導入されたファイバーレーザー(英SPI LASER社製SP100-C、波長:1090 nm、最高出力:100 W)は、 DAC加熱用としては新しいタイプのレーザーです。従来から使われているNd:YAGレーザーやYLFレーザーなどと比較して、たいへん集光性が良く、レーザースポットを20 μm以下に絞ることも可能です。そのため、100万気圧以上に加圧された微小な試料でも効率のよい加熱を行うことができます。また、ファイバーレーザーは、レーザー発振ユニットが小型で発熱量も少なく、水循環型冷却装置が不要(空冷のみでOK)なので、放射光実験施設などへの持ち運びも可能です(図1)。加熱用の集光光学系(図2)は、加熱中の試料部の温度勾配を抑えるため、DACの上下両面からレーザー照射が可能なように組んであります。レーザーの集光ラインは、試料部観察用の光学ラインとは別に配置してあるため、ビームエキスパンダーを使って、試料部の観察像をぼかすことなくレーザースポットを広げることができます。レーザー照射により発生した高温は、Princeton Instruments社製の電子冷却型分光用CCD検出器(PIXIS 256,1024×256素子)でDAC試料部からの熱輻射スペクトルを測定することで、リアルタイムに測温されます。また、このCCD検出器は、ルビー蛍光法による圧力測定にも兼用され、±0.1 GPa以下の精度で、DAC内部の発生圧力(〜80 GPaまで)を見積もることができます。  
 最近、当センターで開発、合成している超高度多結晶ナノダイヤモンド(通称、HIMEダイヤ)のDAC用のアンビルとしての有用性を試験する研究が行われています。当センターでも東大物性研の八木研究室と共同で、HIMEダイヤアンビルのレーザー加熱実験を始めています。今回、新たに導入されたレーザー加熱システムは、 HIMEダイヤDACを使った超高圧高温発生の技術開発と、その地球深部科学への応用を目指す上でも、新戦力になると期待されます。(大藤弘明)


← 前へ戻る