1000トン駆動キュービック型超高圧発生装置
        (ORANGE-1000
 
 本装置は平成7年度文部省研究基盤重点設備費により導入されました。 我が国独自に開発がすすめられてきた“多アンビル(*)型高圧装置”の一種ですが、通常 1000トンまでの荷重を写真の中央部の立方体のスペースに 加えることができます(最高 1200トンまで加圧可能)。この立方体の部分に大型の試料(~1cm3)を入れ、高温高圧実験をおこなうこともできますが、 この場合発生圧力は15 万気圧程度に限られます。本センターではこの空間に更に8個の立方体超硬合金アンビルを用いることにより、 25万気圧を越える圧力と2000度を越える温度を発生し、このような高温高圧下での物質合成や相転移、また物性測定実験などをおこなっています。
 本装置の製作時には、このようなDIA型と称される装置は500トン程度以下の能力のものはかなり普及していましたが、1000トン級の大型装置は ほとんど存在しませんでした。またこの装置では、より高い加圧精度の実現と高圧力の発生を目指し、 各部の材質や形状に様々の改良が加えられています。更に、操作性の上でもいくつかの改良がなされ、取り扱いが非常に楽な装置になっています。
 最近では上記の立方体のサイコロ即ち“第2段アンビル”として、ダイヤモンドの粉を焼き固めた素材(ダイヤモンド焼結体)を用いることにより、 より高い圧力の発生をめざした研究をおこなっています。現在のところ 40万気圧程度の圧力と 1500度C程度の温度の同時発生が可能になっていますが、さらに 50万気圧領域を目指した技術開発がすすめられており、この種の装置としては世界でトップレベルの性能を発揮しています。
 またこの装置を用いて開発した高温高圧試料部は、西播磨に建設された世界最大の放射光実験施設 SPring-8 において、高温高圧下でのX 線その場観察に用いられています。この結果、これまでに 40万気圧程度の圧力下での X線回折その場観察実験が可能になっており、下部マントル深部構成物質の相転移の解明に重要な成果をあげつつあります。
 なお、本装置の名称“ORANGE”は愛媛特産のみかんにちなむとともに、現状の達成範囲より更に高い圧力をめざす“Over the ORANGE”という意味が込められています。

(*)アンビル:もとは刀などをたたいて整形する台座などに用いられる“金床(かなとこ)”の意味であるが、高圧実験の世界では 圧力を発生させるための超硬合金などで作られた様々な形の塊状の部品をさします。
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