超高流体圧発生装置(SHFP-40) 

 本装置は4 GPa,1000℃までの範囲の流体媒質中で各種の高温高圧実験を行うことができるよう、 愛媛大学において西武照雄教授(現名誉教授)のもとで開発されました。流体圧発生装置としては 世界最大級の能力を誇っています。従来から愛媛大学で運用されていた 2 GPa装置を材料、形状、製作精度等について検討し、設計されました。形式はピストン・シリンダー型で ピストンによりシリンダー内の高圧室の圧力媒体を圧縮することにより高圧状態となり、最終的には直径19 mm、高さ100 mmの高圧実験空間(高圧室)が得られます。1 GPa以上の高圧状態を保持するために、 高品質の鋼材を用いた厚肉のシリンダー(内径 19 mm,外径130 mm)、これを外部から支持する サポ−トリングの2重管構造になっています。写真では1200 トン下部プレスによりサポ−トリング (外径 500mm)が中央プレートに押し当てられ、その反力でシリンダーを支持する様に組み立てる 行程を示しています。
 本装置の最大の特徴は圧力媒体がHe,Ne,Ar等の不活性ガスなので化学的に不活性で、静水圧状態が 得られていることです.また,複数の測定用信号が高圧室下部より高圧電極を通じて取出され、圧力、 温度、音速を高精度に同時測定することが可能です。もちろん電気抵抗などの測定も付加することが できます。また加熱用の電流も通すことができます。
 高圧状態を得るには気体体積を1/1000〜1/3500 に圧縮する必要があります。先ず2台の200 MPa,400 MPa増圧装置により400 MPaまで圧力を高める。その後、本装置の300トンプレスにより ピストンを作動させシリンダー内の圧力媒体の圧縮を行い、1 GPa以上の圧力を得ます。また400 MPa増圧装置のみを用いた簡便な組み合せでも実験可能です。 この圧力でも海底最深部の圧力110 MPaをはるかに越える圧力です。高温を得るには前述の高圧電極を通じて、 加熱電流(30 V,20 A)を送り、測定器内の白金ヒーター線に通電します。高温実験では断熱壁を設けるので 高圧室内の測定試料空間は直径6 mm、高さ20 mmに制限されます。
 1GPaを越える圧力では、気体といえども50〜150 kmol/m3に達する高密度状態となっています。 これは通常の液体( H2O:55 kmol/m3 )や固体( Fe:145 kmol/m3 ) と同程度または それ以上の高い密度に凝縮した集合状態です。この状態において、本装置を用いた気体の音速、気体・ 液体の凝固、混合気体の気相−気相分離の計測を通じて高圧流体物性の解明を行い高い評価を受けています。 また、固体の音速と弾性、半導体の半導体-半金属転移についても測定しています。
 現在、本装置により地球深部物質の重要な物性である弾性を調べる目的で固体材料を高温高圧下で、また試料が1 mm程度の大きさに対応するために10MHzを越える高周波の超音波計測を行っています。図ではのWC-Co超硬合金について、 20 MHzの超音波が2 GPa,500℃の温度圧力下で試料中をP波,S波が伝播した波形を示しています。 これを解析することにより、縦波横波の音速や弾性定数を求めることができます。

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