炉床開閉式高温雰囲気炉
本装置は、常圧高温実験を行う装置で、約2000Kまでの実験が可能です。アルミナの炉芯管の周りをセラミックファイバーで断熱してあり、二けい化モリブデンのヒーターで加熱を行います。実験中の雰囲気制御には、N2,CO2,H2,Arガスを用いています。
例えば、H2-CO2混合ガス雰囲気下で実験を行うと、酸化鉄(V)と二酸化けい素からファヤライト(fayalite: Fe2SiO4)を合成することができます。これは、炉内を還元雰囲気状態にすることにより、 2Fe2O3 + 2SiO2 → 2Fe2SiO4 + O2↑ という反応がおこったものです。 ダイヤモンドのグラファイトへの相転移実験を行うことも可能です(こんなことする人はあまりいないでしょうけど...)。ご存知のとおりダイヤモンドは炭素の塊で、空気中で加熱すると空気中の酸素と反応して、なくなってしまいます。 C + O2 → CO2↑ そこで、酸素にふれさないようにするため、炉内をArガスで充満させて相転移実験を行うことができます。
また、本装置は炉床が開閉可能となっており、急冷実験を行うこともできます。高温になっている炉内の試料を水中に落下させることにより、急激に温度を低下させるというものです(写真)。
高温高圧実験の出発物質に、しばしばガラスが用いられますが、そのガラスを作製するためには急冷することが必要です。目的組成の試薬を融解させて(場合によりますが、1300-1800
K程度)、急冷することによりガラスができます。もし冷却速度が不十分だと、ガラスではなく針状の急冷結晶ができてしまいます。