SEMラマン分光装置
本装置は平成13年度文部科学省研究高度化設備費により導入されました(写真)。本装置の最大の特徴は、エネルギー分散型電子顕微鏡(EDS付きSEM)と顕微ラマン分光装置を組み合わせることにより、微小試料の化学組成と結晶構造の両方の情報を得ることができることです。EDS-SEM装置も顕微ラマン装置も、それぞれ数mm程度の結晶に対して測定ができます。しかし従来これらは独立の装置として用いられ、両者を組み合わせることは技術的に困難でした。
本装置では、光ファイバーを用いてレーザー光を電子顕微鏡内に導入することにより、SEMによる組織観察とEDSによる化学組成分析をおこなった微小領域に対し、更にラマンシフトの測定をも可能にしました。この装置は高知工科大学(KIT)に導入された試験機をもとに、(株)日本電子に特注で改良、製作を依頼したものです。今回GRCに導入されたこの装置は、KITの試験機に比べてラマンピークの検出効率が優れるなど、国内初のコマーシャルベースの実用機といえるものです。世界的にみても、同様の装置はイギリスのオックスフォード大学に導入されているのみであり、極めて特徴ある装置です。
本装置は、微少サイズ(数mm程度)の異なる種類の結晶が共存している試料の同定において、特に大きな力を発揮すると期待されます。また、試料の前処理がほとんど必要なく、非破壊的分析が可能なのも重要な特徴です。従来はこのような試料の結晶構造に関する情報は、微少部X回折装置により得るのが一般的でした。しかしこの方法ではビーム径自身が数十mmと大きいため、数mm程度の微小領域からの情報を得ることは不可能でした。
超高圧合成により得られる試料は微小結晶の集合体で、光学顕微鏡で観察しても数mmの個々の結晶の違いを判別することは難しいのですが、本装置を使うとそれが可能となります。勿論顕微ラマン装置およびEDS-SEM装置として、それぞれ独立に使用することも可能です。この装置により、天然の岩石や鉱物はもとより合成試料やセラミックス等の同定にも威力が発揮され、地球科学のみならず材料科学や無機化学等様々な研究分野への応用が期待されます。